微生物が痛みの神経伝達に与える影響の解明に研究資金を提供

2021.10.27

新たなマイクロバイオーム研究プロジェクトを(株)コランダム・システム・バイオロジーがスポンサーとして支援

株式会社コランダム・システム・バイオロジー(東京都港区、代表取締役社長:大竹秀彦、以下、コランダム・システム・バイオロジー)は、ライフサイエンスに特化するホロバイオーム社 (Holobiome,Inc.、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO: Dr. Phillip Strandwitz)の新規研究を支援するため、100万米ドルを拠出します。コランダム・システム・バイオロジーが今回スポンサーとなるホロバイオーム社の研究は、痛みの感受性の調節における腸内細菌叢の役割を評価し、炎症性腸疾患や神経障害などに悩む患者さんの痛みに対処する微生物療法、一般消費者向け製品、診断法などの可能性を探ります。研究期間は2年です。

コランダム・システム・バイオロジーは、2021年6月にホロバイオーム社に対してシードステージの資本投資も行っています。ホロバイオーム社はヒトの腸と脳の関係に特に焦点を当て、マイクロバイオーム科学を専門にしている米スタートアップです。ホロバイオーム社とその科学顧問による最近の研究では、腸-脳軸に沿った神経伝達の調節に微生物の影響が関与していることが明らかになっています。1,2,3

ホロバイオーム社のCEO、フィリップ・ストランドウィッツ博士は次のように述べています。「最近の研究成果では、マイクロバイオームが痛みの感受性や炎症反応を制御する役割を果たしていることが示唆されています。例えば、マウスを使った実験では、神経障害性疼痛への影響が明らかになっており、化学療法の抗がん作用とそれによって引き起こされる痛みの両方が腸内細菌叢によって影響を受けることが分かっています。4,5

「これらの関連性は、さまざまな形態の痛みの病因にマイクロバイオームが関与していることを強く示していますが、そのような効果をもたらすメカニズムや、一貫性のあるスケーラブルな治療介入への道筋は、まだ解明されていません。」

このプロジェクトを通して、ホロバイオーム社は腸と痛みの関係を包括的に評価することが可能となり、痛みや、アルツハイマーやうつ病などの炎症を伴う疾患に対する新たな微生物治療法を生み出す可能性を解明できると考えています。また、新規な治療方法の発見の原動力となるプロジェクトだと位置付けています。

「マイクロバイオーム治療薬の未来は精密さにあり、このプロジェクトはその未来を推進するものです。」とストランドウィッツ博士は解説しています。

この研究プロジェクトでは、「ホロバイオーム・マイクロバイオーム・アトラス」などの社内リソースが活用されます。マイクロバイオーム・アトラスは、ホロバイオーム社が保有する、ほぼすべての既知の分類群にわたるヒト腸内細菌の菌株のライブラリです。 また、様々な生態系から分離・培養が困難な細菌を培養するための技術やプロトコルを設計するというホロバイオーム社の独自の専門性も生かすことで、一般的な菌株バンクでは入手できない新しい属や種が得られます。

コランダム・システム・バイオロジーの大竹秀彦代表取締役社長は、「ホロバイオーム・マイクロバイオーム・アトラスとその構築に使用された施設は、大規模な試験を容易かつ柔軟に実施するための独自の強みを持ちます。」と述べています。「このようなかけがえのない資産を持つホロバイオーム社の研究は、正確な結果に敏速につながり、そのペースは常に驚くべきものです。」と述べています。「スポンサー支援をする本研究プロジェクトの結果が、痛みを制御するマイクロバイオームの役割の解明の飛躍となることを期待しています。」

ホロバイオーム社について

ホロバイオーム社は、マイクロバイオーム科学をアカデミアの枠を超えて発展させるために、3人の微生物学者が2018年に米国で立ち上げたスタートアップです。CEOを務めるフィリップ・ストランドウィッツ博士は、ヒトマイクロバイオーム分野で数多くの賞を受けています。米ノースイースタン大学(NEU)の生物学特別教授・抗菌剤発見センター所長のキム・ルイス博士も共同設立者の一人で、ストランドウィッツ博士の博士課程での指導教官でした。同じNEUのルイス研究室の同僚として研究を進めた抗菌薬耐性と創薬の専門家であるマイク・ラフルール博士も共同設立チームに加わっています。https://holobiome.org/

コランダム・システム・バイオロジーについて

コランダム・システム・バイオロジーは、次世代のライフ サイエンス テクノロジーを解き放ち、人間の健康と生活の質を向上させるための重要な分野としてマイクロバイオームを位置付けています。同社は、新規事業の開発、生体データベースの構築とデータ分析プラットフォームの開発、研究開発の促進と迅速化のための助成金の支援を通じて、マイクロバイオームの進歩を世界的に支援しています。2020年4月に東京に設立され、ビジネスアドバイザー、投資家、アナリストなどで構成されています。https://www.csb.co.jp/

参考文献

  1. Strandwitz, P. et al. GABA-modulating bacteria of the human gut microbiota. Nat Microbiol, DOI:10.1126/science.aat5236.(2018).
  2. Indigenous Bacteria from the Gut Microbiota Regulate Host Serotonin Biosynthesis. Cell 161, 264-276, DOI: 10.1016/j.cell.2015.02.047 (2015).
  3. Kaelberer, M. M. et al. A gut-brain neural circuit for nutrient sensory transduction. Science 361, DOI: 10.1126/science.aat5236 (2018).
  4. Iida, N. et al. Commensal bacteria control cancer response to therapy by modulating the tumor microenvironment. Science 342, 967-970, DOI: 10.1126/science.1240527 (2013).
  5. Ramakrishna, C. et al. Dominant Role of the Gut Microbiota in Chemotherapy Induced Neuropathic Pain. Sci Rep 9, 20324, DOI: 10.1038/s41598-019-56832-x (2019).