大竹秀彦(Corundum Systems Biology 代表取締役社長)著
従来の生物医学研究は、生物学をより理解しやすい構成要素へと単純化させることで優れた成果を上げ、医学を変革させてきました。 しかしながら、慢性疾患のような複雑な病気に向き合うためには、個々の要素だけでなく、システム間の相互関係を捉えられる手段が必要となっています。
ヘルスケアに対する「システム」アプローチは、人間の健康にとって最も根本的な課題に対処し、病気の理解、予防、管理の方法を再定義することで人々のウェルビーイング(健康と幸福)を向上させることができます。
システムバイオロジーとは?
システムバイオロジーとは、多次元の生物学的情報、環境情報、デジタル情報など、情報を予測可能で、かつメカニズムに基づいた実行可能なフレームワークへと統合する考え方です。 近年では、単一細胞(シングルセル)データや空間データ、縦断データのコスト削減と質の向上に加えて、AIの出現は還元主義的アプローチから統合的かつ包括的な考え方へと移行していくことを現実的なものにしました。 様々なデータセットとモデリング戦略を合体させ、複数のスケールにおける相互作用しているシステムの複雑さを理解することで、臨床研究の開発を加速させることができます。
システムバイオロジーを支える4つの柱
私たちは、システムバイオロジーにおいて投資の機が熟している重要な4つの柱に注目しています。
- マルチモーダル統合 オミクス、マイクロバイオーム、医療用画像、臨床パラメータなど、異なる種類の医療データ(多様な生物医学データ形式:モダリティ)を横断的に解析し、統一された活用可能なフレームワークを生み出すAIプラットフォームです。
- 生物学的ネットワークのメカニズム解析 免疫・代謝・神経のネットワークをモデル化し、単なるデータの記述から、因果関係に基づく定量的予測への移行を可能にするプラットフォームです。
- データを活用した創薬・診断・治療 AIを活用した創薬プラットフォームやウェアラブル機器、診断ツールなど、データを価値創出の中心に据えている企業がこれに該当します。
- データ生成プラットフォーム 治療薬・診断ツール・健康最適化ツールを開発するための基盤層として機能する、網羅的で標準化された長期的な生体データを収集するプラットフォームです。
これらの基盤となる柱は、適切な投資先として考える、すなわち科学的にも商業的にも非常に大きなインパクトを生み出す可能性のある企業を見極めるための指針となります。差別化されたデータ資産、高度な計算能力、そして明確な市場との適合性を兼ね備えたベンチャーは、拡張可能なビジネスとして成長できる可能性がある会社として際立っています。
システムバイオロジーを投資アプローチに導入する
私たちは、ベンチャー創出の極めて初期段階にある研究者や起業家と協働することを重視しています。CSBは、テック投資とバイオテック投資の中間領域に位置し、計算プラットフォームへの投資を行いつつ、持続的なバイオテック企業を構築するために必要な科学的根拠基準とマイルストーン重視の姿勢も維持しています。私たちは、研究開発(R&D)や規制対応プロセスを乗り越えるために必要な資金、リソース、メンターシップへのアクセス等、包括的な支援を提供し構想段階から事業化までベンチャーに伴走します。
第1ファンドでは、システムバイオロジー分野への入り口とも言える、マイクロバイオームやヒトの生体知能プラットフォームへの投資に注力しました。現在は第2ファンドにおいて投資領域を拡大し、システム免疫学や神経科学、食を医療として捉えるfood-as-medicine、合成生物学、そして現代のAIの実用的な応用領域も対象に含めています。
私たちは、これらの各分野の間に相乗効果があると考えています。また、システムバイオロジーのエコシステムにおいて他の技術やプレイヤーを活用できる企業を探しています。長期的には、こうした企業や技術が医療の測定・予測・改善の方法を再定義し、治療、診断、そして医療管理の未来を牽引していくと考えています。
私たちの第1ファンドから第2ファンドへの拡大は、当社の投資アプローチそのものも反映しています。私たちは、進化をリスクではなく強みとして捉えています。生物学と技術の進化に伴う、最新の科学的知見や変化する臨床ニーズを取り入れながら、投資領域の重点を柔軟に調整していきます。
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生物学・データ・テクノロジーを掛け合わせた新しい事業に取り組まれている方、またはシステムバイオロジーがいかにして持続的な社会的価値を生み出すのかについて関心のある方は、ぜひご連絡ください。(https://www.csb.co.jp/contact).




